山の料亭の朝/台湾

お茶修行の一幕。

ここは台湾山中の料亭。食養山房。
早朝茶室に各々が集まって出勤前の一席。静かにお茶淹れながら、飲みながら、ゆっくりと体と頭を解し目覚めさせる。

「さぁ、そろそろ時間だ」

と言って山を見渡せる部屋へ移動。
そこではスタッフ全員が揃ってお経を読んでいた。
全員がお経を暗記していて、それはまるで歌を歌うかのように、
歌いながら体を解していくかのように、
はっきりとした声で唱えていた。

これが彼らの朝礼。
今日の報告や担当を伝達した後。
社長の林さんがお話をする。

個性豊かな人が集まる食養山房はスタッフが自主的に動いている。
良いヒト、モノ、コトが集う場。
その仕組みを一日スタッフと共に過ごし少し見えた。

朝礼での林さんの今日のお話。
「山がだいぶ色変わって秋めいてきたね。
山の犬たちが早朝忙しく何か鳴いていたね。
まるでお店に来る婦人方のようだね。
たわいも無い話を一生懸命にしている。
一見、命と関わりのない世間話というのは私たちからすると雑音に聞こえる。だけど、彼らからするとそれは生きる上では大切な事。
生きるのに必要な音だから天は彼らにその音を与えているんだ。
山の犬が吠えているのだって、
婦人方の世間話だって彼らの生きているという訴えで、必要な音。
皆も業務の中で不必要な作業の中で、自分でその意味を見出してぜひ勤めて欲しい。」

今日共にする私の事を紹介してくれて、
皆が転校生を迎えるかのように、
ひとりひとり「お早う!」と声かけてくれた。

それから説明無しにお椀とお箸を持たされ、
「早く遠慮してるとなくなっちゃうよ!」と朝の賄いも混ざる。
もの凄く活気ある朝だった。
皆の良い気をいただき、
これから茶室で一日お茶の練習の始まり。